このエッチングテクニックはエジンバラ(Edinburgh)の版画家、Friedhard Kiekeben によって見つけだされました。
( 参考文献: "The Contemporary Printmaker by Keith Howard"中のNew Etching Chemistry by Friedhard Kiekeben)
腐食中に"カス"が出来ない!
塩化第二鉄液にクエン酸を混ぜると正確なエッチングができる上、腐蝕中に沈殿物による障害が起こりません。
つまり、単純に版の描画面を上向きにして水平トレイ(バット)の腐蝕液中に浸けた状態にしておくことができます。同様にタテ型腐蝕タンクでも使用できます。
特徴:
●正確できれいな腐食ができる。(網点処理した写真製版や繊細な表現をする場合に特に向いていると思います。)
●腐食スピードは塩化第二鉄液にくらべて2倍。
●腐食中はタンクでも蓋をして蒸発を防ぐようにする。(ガスは発生しません。)
●液の耐久性は2〜3年。劣化した腐食液は油性の黒いオリーブ色になる。腐食能力が突然落ちる。
廃棄処理は専門の廃棄物処理業者引き渡すか、または、強い炭酸ナトリウム水溶液を徐々に加えていく。二酸化炭素が発生し泡が出る(無害)がそれがおさまれば中性(ph7)になるので、
作り方 (銅板を腐食させる場合)
4/5の塩化第二鉄の飽和溶液に1/5のクエン酸溶液を加える。クエン酸溶液は、3/4の温水に1/4の無水クエン酸粒を溶かす。
(例)
『5Lのエジンバラエッチ液を作る場合』
750ccの温水に250gの無水クエン酸粒を溶かします。
クエン酸が溶けたら、4Lの塩化第二鉄液(飽和溶液)を加える。
『10Lのエジンバラエッチ液を作る場合』
1.5Lの温水に500gの無水クエン酸粒を溶かして、8Lの塩化第二鉄液(飽和溶液)を加える。
クエン酸は始めに一度だけ混ぜればよい。
新しい腐食液を作ったら、使う前に小さな銅片を腐食させてテストして下さい。
この腐食液の保管は、トレイを密閉するか、別のボトルなどに移しかえて栓ををします。
反応機構
塩化鉄溶液に金属銅を入れると、銅は溶け出し、その後、水酸化銅になって沈殿しますが、クエン酸を入れておくとクエン酸銅(錯体)をつくって溶けているので、銅の沈殿ができないというわけです。
クエン酸(citric acid)の性質
クエン酸は金属イオンとキレートすることが知られています。
キレート(化学用語)とは、金属元素と結合(錯結合)し、安定で溶出しやすい化合物を形成する。
キレートの語源はギリシャ語のカニのハサミ。カニがハサミで物を挟むような形で錯結合するところかららしい。
大量の水と一緒に流すことができるのは、腐食液から上げて、金属板を洗うと思うのですが、その洗い水(重曹水)ですよ。
その洗い水も、基本的には濾紙で濾してなるべく金属が下水に入らないように配慮したほうがベターだと思います。
以上ご存じでしたら大変失礼いたしました。